ISIシステム 法歯学 照合方法及びその特徴

他の照合方法及びその特徴

 大規模災害等における身元特定作業には、非常な困難が伴うことが容易に想像されます。
 ご遺体の身元を特定し家族・親族の元に届けるためには照合の精度が問われることは言うまでもありませんが、 大規模災害時に発生するであろう社会的インフラの破壊・寸断、水・食料・薬品の供給や電力・燃料(ガソリン)などの エネルギー供給が不足する状況下においては、照合スピード、作業の簡便性・効率性、そしてシステム全体のコストも問われます。
 上記の観点から、身元特定のための他の照合方法とその特徴を列挙致します。

  1. 歯科医師の目視による歯型照合

     歯科医師により記録されたデンタルチャートを利用した目視による照合(紙媒体による記録)です。
     照合元データと照合先データがごく限られた範囲であるならば有意性があると想われますが、照合先データが膨大な場合もしくはどこに存在するか分からない場合、照合作業自体が手作業であることも考え合わせると大幅な時間・手間がかかります。

  2. レントゲン画像による歯型照合

     東日本大震災においても使用された、位相限定相関法による歯科X線画像照合という方法があります。
     専用の画像処理ソフトウェアを使用するのでデータさえ採取できれば照合スピードは速いと想われますが、画像をデータとして扱うことから、撮影時の画像のブレなどの問題や、ポータブルなX線撮影装置を例えば遺体安置所に持ち込めたとしても放射線を取り扱うために細心の注意が必要であり、放射線防護用具の用意のみならず放射線の拡散防止にも気を配らなければならないことは明白です。
     また、デジタルカメラを使用していない場合、画像を電子データに「変換」する作業も(量が多い場合)かなりの手間がかかると予想されます。

  3. 指紋による照合

     指紋には、「終生不変」という特徴があります。また、指紋には「特徴点」と呼ばれる点があり、日本人では多い人で150~160点、少ない人でも50~60点、平均で100点あるとされています。この特徴点のうち、12個が一致すればほぼ同一人物となります。その確率は1,000兆分の1とされ、半分の6個で(100億分の1)となります。この12点指紋鑑定法を裁判証拠として採用している国がほとんどであります。
     ただ遺体の鑑定の場合、腐敗が進行したり、白骨化したりした場合にこの鑑定方法は使用できないことは明らかであります。

  4. DNA鑑定による照合

     身元を特定する場合において、現在では指紋による照合と共に信頼性が非常に高い方法です。
     ごく初期には、数百人に1人同一のDNAの塩基配列パターンが認められる程度だったとされますが、現在では同一パターンが出現する確率は4兆7000億人に1人と言われています。
     人間のDNAの塩基配列をすべて解読する訳ではなく、一部を使用しているだけなので、指紋による照合と同じく、確率的な数値の精度をもって同一であるかどうかの判定基準としています。
     鑑定方法にはいくつかの種類があり、早ければ1日以内で鑑定結果が出ることもあります。しかし刑事訴訟や事件などでDNA鑑定を行う場合、慎重に検査を行うので数週間から1ヶ月以上かけることもあります。
     大変多くの工程を処理することにより検査が行われていて、数十種類の検査機器や分析装置を使用して鑑定しています。また、鑑定一般に内在する採取ミス、試料の取違えなどのヒューマンエラーの可能性から逃れられるわけではありません。
     また、「鑑定に必要なだけのDNAを採取できるのか」という問題もあります。例えば古い凝結した血液や、白骨化した遺体の場合、鑑定可能な「新鮮な」DNAの採取はかなり困難だと思われます。
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